料理人がIT会社に転職し、飲食店開業へ
自分にはできないって思ってませんか？
レストランキャリアラボ事務局です。
今回は、飲食業の厳しさに触れて他業種に転職し、また料理人として戻ってきた香椎水里（かしいみなり）さんにお話しを伺いました。
現状を変えたいけれど、なんだか一歩踏み出せない方にぜひ読んで欲しい記事です。
料理人からIT会社に転職して、再び料理人へ。
「間借り営業」から「飲食店の独立」に向けて活動中の香椎水里（かしいみなり）です。
「間借り営業」って聞いても聞き馴染みがない方も多いかもしれませんが、既存の飲食店の営業時間外や、使っていないスペースを借りてお店を出店する営業の仕方です。
今日お話しするのは、
『IT会社に転職できて、そのままうまく行きました！』
みたいな話ではなくって、転職したからこそ気づけた大切な想いをお話ししていきます。
料理人で一生仕事していくことができるのだろうか・・・と一度でも考えたことがある人は、是非読んでみてください。
料理が好きなのに、もう包丁を見たくない
私は大好きな料理が、やりたくなくなりました。
というのも、社会人３年目に夢が崩れるほどの大きなショックを受けたからです。
茨城の専門学校を卒業し、懐石料理屋さんに就職した私は、飲食店あるあるの労働時間が長い、給料が安い、休みが少ないという環境の中で料理人人生をスタートしました。
しかしそんな厳しい環境の中でも、先輩たちが新しいことにどんどん挑戦させてくれたのでとても楽しくやりがいを感じていました。
だからこそ、２社目に行っても同じように楽しく学んで、料理人としての腕を極めたいと思っていました。
しかし、現実は思っているように簡単にはいきませんでした。
社会人３年目で行った、リストランテのイタリアンで待っていたのはとっても厳しいシェフに毎日たくさん怒られ、理不尽なパワハラを受ける日々でした。
お客さんに喜んでもらうことや料理が好きで始めたはずなのに、いつもシェフの機嫌が気になって、
「どうやったらシェフに怒られずに過ごせるだろう？」
と考えることの方が多くなっていました。
やるせない気持ちに、仕事の帰り道でポロポロと涙がこぼれました。
「もう、料理はやりたくない。包丁も見たくない。これがあと１０年、１５年先もずっと続くのかな・・・」
飲食業界にいることの不安が多くなり、他業種への転職もぼんやりと考え始めるようになりました。
料理をやめる決断
そんな時に出会った一人の女性の経営者との会話が私の人生を変えるきっかけになりました。
出会いは偶然、その日話していたのも偶然でしたが、第三者だからこそ、今自分の悩んでいること・どうにもできない現実を打ち明けてしまいました。
「転職したいけど、飲食以外やってこなかったから他の仕事は絶対できない。でもこのまま飲食業で働き続けるのも辛い。私って本当に何もできない・・・」
普段職場では言えない本音がどんどん溢れ出てきました。
それを聞いていた女性経営者は、
「さっきからあなた、否定の言葉しか使わないわね。自分で自分に対してひたすらフタをし続けて、このまま飲食から別の業種に転職しても何もできないわよ。」
衝撃的な言葉でした。
確かに私はネガティブな言葉しか使っていなくて、できないことをできるようにしようなんて考えていなかったんです。
できないって言っている自分カッコわるいし、できないことをできるようにしたい！
その女性の言葉を聞いてから、一気にポジティブに考えられるようになってきて、
「せっかくならいっそ私が全くできない、飲食とは１８０度違う業界に行ってみよう！」と思いました。
でも、自分が出来ないことっていうと何だろう？？
とりあえず・・・料理はできる。吹奏楽をやっていたから音楽もできる。スポーツも水泳を習っていたからある程度できる。・・・あ、私パソコンが出来ない。
料理人でパソコンを使うことなんて、滅多に無いので、パソコンは文字の打ち方がわからないだけではなくって、電源の入れ方すらわからないほどの初心者でした。
それでも、パソコンは将来必要なんじゃないかと感じました。独立するとしても、将来何か別のことに挑戦するとしても、きっとパソコンスキルは必要になる。
だからこそ、今のうちにパソコンスキルをつけておきたい。
そう思った私は、女性経営者の前で思ったままにボソッと呟きました。
「将来もしかしたら飲食に戻るかもしれないし、全くやったこともないし、電源の入れからもわからないけれど、私IT業界のパソコンを扱う仕事についてみたい・・・」
特に伝えるつもりで言った言葉ではなかったのですが、その言葉を聞いた女性経営者は未経験の私を受け入れてくれる、SEとして働くIT会社を紹介してくれました。
SE（システムエンジニア）とは・・・何かのシステムを作ろうとしたときに、どうやったらできるかの設計をするお仕事です。
その会社の社長がとっても優しく、女性の働き方を応援したいと思ってくれている人で、
「SEとして生きていくつもりはないけれど、雇っていただけますか？」
と少し生意気な口を聞いた私に「いいよ」と優しく答えてくれました。
これが私の転機でした。
そこからはパソコンの電源の入れ方と使い方、SEの仕事、様々なことを学び吸収していきました。
第二の転機
ちょうど一年たった頃、世の中ではコロナが流行りだしていました。
そんな時、近所に住んでいた看護師の子が
「コロナで忙しくて、まともにご飯をつくる時間もないし、お店も早く閉まってしまうからご飯を買いに行く時間も、食べにいく時間もないんだよね。」
とボソッと言っているのを聞きました。
それを聞いて何かこの子のためにやってあげたいな・・・と思うようになり
「私がお弁当作って持って行ってあげるよ！」
と、言ってその日から毎日お弁当を作ってあげるようになりました。
看護師の子が喜んでくれるのも嬉しかったのですが、何よりメニューを考える日々が楽しくて、気づくとどんどん試行錯誤していました。
「私、やっぱり料理好きだなぁ」
飲食の世界に戻りたいと思っている自分がいました。
でも、コロナが蔓延している中で、飲食業は離職者も増えていて転職するのは厳しそうな状況でした。
そこで、まずは副業で始めてみることにしました。
世の中には副業禁止の会社もあるかもしれませんが、私がなぜ副業できたかというと、社長に直接言いに行ったからです。
「週末にお弁当販売を副業でやっていいですか？？」
社長はすぐに「いいよー」と言ってくれました。
こうして私は平日はIT会社、週末は料理人という少し珍しい働き方を始めることになりました。
そこからは、うまく行かないことは山積みで、語り尽くせないくらい苦難と気づきがありました。そんな中でも料理ができることが楽しくて、どんどん新しいことに挑戦していきました。
お客さんが料理を食べている姿がみたいと思い、お弁当販売をやめて赤羽橋に月１回『間借り営業（空き店舗を借りて営業する方法）』を始めたこともありました。
お客さんに３０００円で提供していたコースを８０００円まで引き上げてみたりしたこともありました。
そうやってSEを続けながらも月一回の間借り営業をするということをやってきた私は、たくさんの苦難を乗り越えたことで自信がついてきて、
「いよいよ飲食店を開業しよう！」と決断しました。
新たな挑戦と野望
現在は経験したことを活かし、開業準備に取り組んでいます。
物件を探して、必要な書類手続きをして、必要な物を購入して、やることがいっぱいあります。
最近改めて振り返ると、いろいろと苦難があった中でもずっと前に進んでこられたのは、
「できることからやってみる」
「とにかく口に出して、人に言いまくる」
ということをやってきたからじゃないかなと思っています。
口に出すことで、自分が逃げられない状況になり、現状が変わっていきました。
私の場合は、社長に「SEになりません」とか「お弁当販売やります」とか「飲食店独立します！」とか言ったことですね。
正直やる前から宣言するってできるかわからなくて不安だし勇気もいるけれど、口に出して大事なひとに伝えると、やらなくてはならなくなるので結果的にうまくいきやすくなるなぁって感じています。
もし、現状を変えたい人がいたら、大事なひとに宣言するというのをやってみるのはおすすめです。きっと何かが変わっていきます。
私は、これから飲食店開業の他に、一次産業の方々の支援をやっていきたいと思っています。
一次産業といえば、畜産・水産・農産とありますが、とても大変で大切なお仕事なのに努力や試行錯誤が世の中に伝えられていない現状を感じています。
飲食店で産地の表記がなかったり、産地は書いてあるけれど生産者の方の情報は載っていないなんてことがほとんどではないでしょうか。
だからこそ、もっと一次産業の方が潤うような世の中に変えていきたい！
私の料理はこれからも一次産業、生産者さんたちの声を大事にして提供していきます。
もしこの記事を見て、私も頑張りたい、何かに挑戦したい、私に相談したいと思ってくれた方は、是非一度ご飯を食べにきてください。
私の最新の活動情報はインスタグラムでアップしていて、DMに連絡をくれると個人のお悩みも返信できます。
（DMを送る際は「インタビューを見ました」と添えて送ってください。）
私たち料理人は「食の未来を作っていく必要がある」
かしいみなり は挑戦し続けます。
自分の気持ちに素直な生き方を実現する
株式会社Core DrivenはRestaurant Career Lab.という飲食店の複業サービスを展開しております。
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